菫(すみれ)は日常のなかから咲き出た非凡なる奇跡である。
春の百花繚乱に先駆けた時期に咲き、その到来を知らせる。
場所は、花壇や温室の類いではなく
人が踏み入れる空間、野辺に咲く。足下に咲く。
山登りをしている時にも見かけると、つい目がいく。
地を這うような低い位置に小さく咲いているのに上を向かずに横を向いている。
それでも気をひかずにはいられないものがある。
紫色の花には不思議と心惹かれるものがある。
濃い緑とのコントラストにおいて、赤ほど発散してはいないが
抑え気味のなかに内心、扇情的なものを秘めている。
その形は目をこらして見ると、とんでもなくよくできている。
対称のような非対称のような構成、それを支える取っ付き方の妙、
全てがこの上なく洗練されていて、ちょっとやそっとでは真似できない。
少なくとも数百回はエスキスし直しを費やしたであろう。
でなけれは無造作な荒れ野にあっても、このように凛として気品を失わない姿にはならないのではないか。
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長年棲み続けている或る「庭」の現実からの直接・独自の考察・雑感。
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