

勝手に「外庭」と称している近くの雑木林で、夕方、
何処からかヒグラシ蝉の鳴声が聞こえてくる。
かなかなかなかなかなかな。
声のする方へ行って見る。どこに居るのか分からない。
探しているうちに鳴き止んでしまい、また他で恐らく違うヒグラシが鳴く。
方角は分かるが、遠いか近いか判別できない。
ヒグラシはその声自体に距離感を持つ。それに騙される。
かなかなかなかなかなかな。
出だしの直ぐ後ぐらいが最も強くて気を引く、そしてだんだんと弱まり隠れ入る。
最初のうちは近くで聞こえ最後の方は遠くで聞こえる。
かなかなかなかなかなかな。
その声のみが実体であって、体は存在しない生き物なのかも知れない。
探っている声は消えていき、他のが鳴いて集中力を削ぐ。
そちらに関心を向けると、また他の。
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耳だけに熱中して迷路にはまり込み、気付くと、どっぷりと日が暮れていて暗闇に視野を失う。
耳だけに熱中して迷路にはまり込み、気付くと、どっぷりと日が暮れていて暗闇に視野を失う。
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深い森の中、いつの間にか一匹のヒグラシも鳴いていない。
深い森の中、いつの間にか一匹のヒグラシも鳴いていない。
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