あまり話題にされたことのない花に思う。
子供の頃は、玄関先などに芳香剤の如くに扱われていた為かあまりいい印象はなかった。
さほど美しいとも思っていなかったが、濃厚な香りだけは印象づいていた。
それでも、ほぼ樹形も変わらずに毎年しっかりと同じように花をつける。
雪が雨に変わり、冷たいながらも何か生暖かく感じる時節に。
受験などの年頃には、冬を堪え抜いてやがて春が来ることを予感させるものがあった。
沈丁花には長らくこの記憶が付きまとっていた。
やがて、
思い描く妄想の春よりも今ある現実に充実感を見出すようになるに従い
さらに見方が変わっていった。
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建築系の分野などに何年も関わっていると
一過性でない、耐久性のある美に信用を置くようになる
何年も経って見ても、「やはりいい」とか
何度も見返すうちにジワジワとよくなってきて
いつのまにかしっかりと根付くようなとか。
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寒暖の激しい時期に長い期間存在する沈丁花の肉厚の花びらや
ほとんど手をかけずとも数十年変わらずにそこにある安堵感は
信じられるものが乏しくなりつつある昨今、
気の付かぬうちに意識の一エリアを占め
春先にはその甘い香りを期待するようになる。
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